構造分析 坂口博信・堀井雄二・鳥山明
クロノ・トリガー 表紙

クロノ・トリガー

Chrono Trigger

時間を超える旅は、「選択の結果を見届ける」ための装置だった。

クロノ・トリガーは、1995年にスクウェアが放った伝説のRPGです。「ドリームプロジェクト」と呼ばれた坂口博信・堀井雄二・鳥山明のトリプルコラボは、ゲーム史に残る作品を生み出しました。しかし構造を分解すると、この作品の真のすごさは「時間旅行」の設計にあることが分かる。過去で行った選択が未来を変え、その結果をプレイヤー自身が確認できる。単なるタイムトラベルではなく、「因果の可視化装置」としてゲームシステムを設計した。マルチエンディングも「正解探し」ではなく「因果の分岐を体験する」ためのものです。

物語の設計図

出来事 行動 心理
因果 伏線
A.D.1000年、千年祭の日。少年クロノはマールと出会い、ルッカの転送装置の事故で過去へ飛ばされる
中世(A.D.600年)でマールが消滅しかける。歴史改変の影響──因果の連鎖が初めて可視化される
因果の可視化の第一歩。「過去の行動が未来を変える」をプレイヤーが体験する最初の瞬間
魔王の存在と、時代を超えた因果関係を知る。ゲートを通じて複数の時代が接続されていることが判明
荒廃した未来(A.D.2300年)に到達。人類はラヴォスによって滅ぼされていた
ラヴォスは6500万年前に宇宙から飛来し、地球の内部で力を蓄え、A.D.1999年に地表を破壊する
「未来を変える」ことを決意。過去に戻り、各時代でラヴォスに繋がる因果を断ち切る旅が始まる
原始(B.C.6500万年)で恐竜人と戦い、中世で魔王と対峙し、古代文明ジールの真実を知る
魔王は「ラヴォスを呼び出した張本人」ではなく「ラヴォスへの復讐者」だった。敵と味方の反転
敵と味方の反転。魔王は「悪」ではなく「復讐者」──善悪の二項対立を超える構造
古代ジール王国がラヴォスの力を利用しようとして破滅。クロノが命を落とす
仲間たちは「時の卵」を使い、クロノの死の瞬間に介入して歴史を改変、クロノを救出する
時間旅行で主人公の死を覆す。ゲームシステムと物語が完全に一体化した瞬間
ラヴォスとの最終決戦。全ての時代の因果を束ね、星の寄生者を倒す
未来は書き換えられた。「歴史は変えられる」──因果は決定論ではなく、選択の積み重ねだった

設計図のここがすごい

分析を終えて

フローチャートにして最も驚いたのは、6500万年というスケールの因果が一本の線で繋がることです。ラヴォスの落下(B.C.6500万年)から地表破壊(A.D.1999年)まで、全ての時代に因果の糸が張り巡らされている。そしてプレイヤーは、その糸を一本ずつ辿り、解き、繋ぎ直すことができる。

魔王の設計が特に秀逸です。序盤では「倒すべき敵」、中盤で「復讐者」に反転し、プレイヤーの選択で「仲間」にもなる。一人のキャラクターが、プレイヤーの選択によって物語上の意味を変える。これは小説や映画では不可能な、ゲームならではの構造です。

そしてロボの「400年かけて森を育てる」サブイベント。たった一つのサブクエストに400年の重みを持たせられるのは、時間旅行という装置があるからこそ。プレイヤーは「お使いをこなした」のではなく「400年の因果を見届けた」のです。

1995年のゲームがこの設計力を持っていたことに、改めて脱帽します。「時間旅行もの」は山ほどありますが、時間旅行を「因果の可視化装置」として、しかも「プレイヤーの手で因果を操作できる」レベルまで昇華した作品は、今なおクロノ・トリガーが最高峰です。

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